2010年12月4日土曜日

英文法をやり直す(第四回)

[英文法をやり直す(第四回)]

さて、今回は残っている疑問詞についておさらいしましょう。とはいえ、ここまでの内容を踏まえてもらえれば、そんなに難しくはありません。

(3) why

言わずと知れた、「理由」を問うための疑問詞ですが、この疑問詞は「副詞的」です。つまり、普通の平叙文における副詞的な部分、なおかつ理由に関係する内容を表現している部分を問う場合に使用されます。具体的に考えてみましょう。

He stayed away from school for his illness. (彼は病気のために学校を休みました)

という文では、for his illnessの部分が理由を表す表現であり、なおかつ[前置詞+名詞]の形ですから副詞的です。ということは、これを尋ねたい、つまり「なぜ、彼が休んだか」を尋ねたい場合には、これまでの疑問文と同じで、この部分にwhyを置いてやればいいことになりますね。

He stayed away from school why?

後は、手順通りです。疑問文ですから、He stayed…のままというわけにはいきません。一般動詞の文ですので、doを前に置き、さらにstayedが持っている過去形をdoに預けて、didにします。

Did he stay away from school why?

最後は、疑問詞を文頭に出して、

Why did he stay away from school? (なぜ彼は学校を休んだのですか)

となります。では次の文はどうなるでしょうか。

He stayed away from school because he was ill. (彼は病気なので学校を休みました)

常識的に考えるとこの文のbecause he was illと先ほどのfor his illnessはほとんど同じことを表しています。ですから、当然この文のbecause he was illの部分もwhyに置き換えて疑問文を作ることができると考えてよいはずです。

He stayed away from school because he was ill.
→He stayed away from school why?
→Did he stay away from school why?
→Why did he stay away from school?

また、この疑問文に対して、どちらの表現でも答えることが可能です。

Why did he stay away from school? – For his illness.
Why did he stay away from school? – Because he was ill.

ここからどういうことが言えるでしょうか。この事実が示していることは、because…をwhyという副詞的な疑問詞によって問えるということです。ということは、because he was illというのは[前置詞+名詞]であるfor his illnessと同様に副詞的なものだと判断することができます。ただ、違いも確認しておかなければなりません。というのも、because he was illという4語の塊の中には、

He was ill. (彼は病気でした)

というそれ自体、単体で用いることのできる完成された文が含まれているからです。一方、for his illnessからforを取り除いたら、his illnessという名詞が残るだけで、これだけでは全く完成された文とは言えません。ここまでの副詞に関する説明で、私たちは既に三種類の副詞的なものに出会ったことになります。

一語の副詞=there, here, home, simplyなど
前置詞+名詞=at the station, for his illnessなど
内部に完全な文を含むもの=because he was illなど

この分類のうち、[前置詞+名詞]のように二語以上がくっついて一つの副詞的な要素として働いているもので、なおかつその中に完成された文を持たないものを、[副詞句]と呼びます。一方、because…のように、やはりいくつかの語が集合して一つの副詞的な要素となっており、なおかつその中に完成された文を持っているものを[副詞節]と呼びます。よって、副詞的なものには、[副詞]、[副詞句]、[副詞節]という三種類がみとめられるということになりますね。(勘の鋭い人は、じゃあ[名詞句]、[名詞節]とか[形容詞句]、[形容詞節]とかもあるんだろうか、と思うかもしれません。もちろん、あります! それについてはいずれ機会を見て説明します。)

少し話がそれましたが、whyに戻りましょう。ここで、次のような問を立てる人がいたらどうでしょうか。

上の例文では、for his illnessを一塊として考え、理由を表す副詞だからということで、whyに置き換えたが、forとhis illnessを分けて考えるならば、his illnessは名詞である。ここだけを名詞的な疑問詞であるwhatに置き換えることはできないのか?

結論から言うと、これは可能です。つまり、for his illnessを一塊として考えて、それをwhyで尋ねることが出来るのと同様に、forとhis illnessを分けて、his illnessだけをwhatで尋ねることも可能だということです。具体的に見てみましょう。

He stayed away from school for his illness.

この例文のhis illnessの部分を尋ねるわけですから、そこにwhatを置いて疑問文を作るということになります。

He stayed away from school for what?
→Did he stay away from school for what?
→What did he stay away from school for? (何が理由で彼は学校を休んだのですか)

ちなみにbecauseのタイプの場合、このような疑問文を作ることはできません。

(×)He stayed away from school because what?
→(×) What did he stay away from school because?

理由は簡単で、he was illというのは文であって、名詞ではないからです。それを名詞的な疑問詞whatで置き換えることができないのは当然です。


(4) how

次に出てくる疑問詞はhowです。やはり、基本的な疑問文の作りは同じですが、また少し性質をことにします。これまで、what=名詞的、which=指示形容詞的/名詞的、what/where/why=副詞的という性質を見てきました。これに対し、howは①形容詞的性質/②(様態・方法・程度の)副詞的性質、を持っていると言えます。難しそうに聞こえるでしょうか。でも、安心して下さい。具体例で理解していくとそんなに厄介ではありません。

まずは、①の形容詞的性質を見てみましょう。これは、

You are fine/good.(あなたはよい状態です)

という文のfineやgoodの部分を尋ねる場合に使用することができます。これらの語は形容詞表現ですから、whatでは尋ねることができません。そこで、形容詞的な性質を持つhowの登場となるわけです。

You are how?
→Are you how?
→How are you? (気分(状態)はどうですか→挨拶)

howを用いるという点以外は、whatなど他の疑問詞の時と全く同じですね。勿論、be動詞の文だけではありません。例えば、

She looks young. (彼女は若く見える)
That sounds strange.(それは奇妙に聞こえる)

などの文で、youngやstrangeといった形容詞の部分を聞きたい場合も、howを使います。

She looks how?
→Does she look how?
→How does she look? (彼女はどんな見た目ですか)

That sounds how?
→Does that sound how
→How does that sound? (どう聞こえますか)

同じように、次のようなSVOCの文型の形容詞も尋ねることができます。

He found it difficult. (彼はそれを難しいと思いました)
(He(S)/found(V)/it(O)/difficult(C))

この文のdifficultは形容詞です。というわけで、これを聞く場合にもhowを使って、

He found it how?
→Did he find it how?
→How did he find it? (彼はそれをどう思いましたか)(但し、やや稀)

とすることもできます。ここまでの疑問詞疑問文の作り方を理解してきていれば、特に難しくないですね。

では、次に副詞的な用法に目を向けてみます。まずは、次の英文を確認してください。

She treated animals kindly. (彼女は動物を優しく扱いました)

この文における、kindlyはtreat「扱う」という動詞を修飾する語となっており副詞です。(一般に動詞を修飾する語は副詞的なもので、また、形の面で言うと形容詞+lyとなっているものは副詞とみなしてかまいません) また、扱った際の「扱い方」を説明しているので「様態の副詞」と見なすことができます。この「様態の副詞」はhowで聞くことができるものの一つです。

She treated animals how?
→Did she treat animals how?
→How did she treat animals? (彼女は動物をどのように扱いましたか)

では、「方法の副詞」についても見てみましょう。

He solved the problem by pure guesswork. (彼はその問題を全くのあてずっぽうで解きました)

この英文で、by pure guessworkというのは前置詞+名詞ですから、副詞的な要素[副詞句]です。また、ここで、by pure guesswork「全くのあてずっぽうで」というのは、彼がその問題を解いた「方法」を説明しています。よって、この部分は[方法の副詞]だと考えることができます。やはり、ここでもhowが活躍します。

He solved the problem how?
→Did he solve the problem how?
→How did he solve the problem? (彼はどうやってその問題を解いたのですか)

だんだん、howの使い方の全貌が見えてきたかと思います。最後に残っているのは程度の副詞ですが、これが少し厄介です。「様態の副詞」と「方法の副詞」は主に動詞を修飾しますが、「程度の副詞」は形容詞を修飾することが多いです。具体例で確認しましょう。

She is very happy. (彼女はとても幸せです)
He was deeply shocked. (彼は深くショックを受けました)

これらの文において、veryやdeeplyは後に続く形容詞の度合いを説明しています。例えば、very happyなら、veryはhappyの程度(つまり、「どのくらい幸せなのか」)を説明していることが分かります。疑問詞howはこの「程度」を尋ねる場合にも使うことができます。但し、この場合、疑問文を作る過程で注意が必要です。ここで、第三回のwhichの疑問文のことを少し思い出してみましょう。引用します:

===

Does he like which book?

ここから、whatの時と同じように、疑問詞を文頭に出すわけですが、今回の文ではthis bookという名詞句の一部であるthisをwhichに変化させているわけですから、そこからwhichだけを強引に引きはがして前に移動させることはできません。というわけで、which book全体を一塊の要素として文頭に移動させることになります。

(×)Which does he like book?
(○)Which book does he like? (彼はどの本が好きですか?)

===

疑問詞whichを用いた疑問文では、名詞句の一部(上の例ではthis bookのthis)をwhichに変えている場合、その名詞句全体(上の例で言うとwhich book)を文頭に移動させる必要がありました。実は、形容詞を修飾する「程度の副詞」の場合も、形容詞と半ば合体し、一つの大きな形容詞句を作っているとみなすことができます。その証拠に、

A very happy woman

などと言うこともできます。名詞を限定的に前から説明できるのは原則的には形容詞だけですので、very happyというのはここでは大きな形容詞的要素となっているということがわかります。とすると、whichの場合と同じように、ある要素の中の一部分だけを疑問詞に変えた場合、その要素全体を文頭に持ってくることが必要になるので、

She is how happy?
→Is she how happy?
→How happy is she? (彼女はどのくらい幸せですか)

He was how shocked?
→Was he how shocked?
→How shocked was he? (彼はどのくらいショックを受けたのですか)

というように、疑問文を作る必要があることがわかります。このタイプの文を作文する時に、よく、

(×)How is she happy?
(×)How was he shocked?

という文を書いてしまうケースがありますが、これは間違いです。

(無断転載禁止、但し個人的に印刷するのは可)

英文法をやり直す(第三回)

[英文法をやり直す(第三回)]

第一~二回で疑問文に関する基礎をおさらいしました。ただし、疑問詞疑問文について、扱った疑問詞はwhatとwhoだけでしたね。疑問詞は他に、which, why, when, where, howなどがあります。第三回ではwhich, when, whereの使い方について少し見ていきましょう。

(1) which

whatが「何?」であるのに対し、whichは「どれ?」「どの?」というイメージです。例えば、

He likes this book. (彼はこの本が好きです)

のthisの部分を尋ねたい時(「彼が好きなのは「どの」本なのか」というような疑問文を作りたい時)などにwhichを使います。疑問文の作り方自体は全く同じで、尋ねたい部分を疑問詞に変え、動詞部分に疑問文の操作を行います。この文の場合、likesは一般動詞であり、三単現のsがついていますから、heの前にdoesを出し、likesからsを取ればいいわけですね。

Does he like which book?

ここから、whatの時と同じように、疑問詞を文頭に出すわけですが、今回の文ではthis bookという名詞句の一部であるthisをwhichに変化させているわけですから、そこからwhichだけを強引に引きはがして前に移動させることはできません。というわけで、which book全体を一塊の要素として文頭に移動させることになります。

(×)Which does he like book?
(○)Which book does he like? (彼はどの本が好きですか?)

日本語で「彼はどの本が好きですか」の「どの」だけ位置を変えることが難しいのと同じです。

(×)「どの彼は本が好きですか」
(×)「彼は本がどの好きですか」

さて、今、目の前の机に10冊程度の本が並んでいると考えてみましょう。その10冊のうち「彼はこの本が好きです」と言いたければ、

He likes this.

ということができます。つまり、この場合this bookのことを意味しているのは分かり切っているので、this bookといちいち言わなくても、thisだけでいいのです。日本語で言うと、this bookのthisは「この」という意味であり、thisだけで使う場合には「これ」という意味になるということです。文法的に言うと、this bookのthisは指示形容詞であり、thisだけの場合は指示代名詞ですね。もちろん、whichはこの指示代名詞としてのthisのかわりとなることもできます。ですので、

He likes which?
→Does he like which?
→Which does he like? (彼はどれが好きなのですか)

という文ももちろん可能です。

(2) when, where

では、次はwhenとwhereについて少し考えてみましょう。この二つの疑問詞がwhatと大きく異なるのは、whatが名詞的であるのに対し、これらが副詞的であるという点です。(もちろん、この区別にはかなり曖昧な側面があることは否めません。) ひとまず、この区分を暫定的に仮定して話を進めましょう。例えば、He likes the book.のthe bookを尋ねる文はwhatを使って作ることができますが、

He bought the book yesterday. (私はその本を昨日買いました)

のyesterdayを尋ねる場合はどうでしょうか。同じ理屈でwhatを使って

(×)What did he buy the book?

という文を作っても、これは間違いです。これが正しくない理由は、yesterdayが「時の副詞」であるからで、名詞であり、しかも時の意味を持たないwhatではかわりになることができないからです。けれども、「時=when」という安易な覚え方はお勧めできません。ちゃんと、「副詞」という要素も一緒に覚えることが大切です(後で必ず効いてきますから)。そこで、上の例文のyesterdayを聞く疑問文を作りたければ、副詞的であり時の意味を持つwhenを使わなければいけません。しかし、その点以外はwhat, whichの時と同じです。

He bought the book when?
→Did he buy the book when?
→When did he buy the book?(彼はいつその本を買ったのですか)

「場所の副詞」に関しても同じように考えてもらって大丈夫です。

She went home. (彼女は家に帰った)

のhomeの部分を尋ねたければ、whatでは無理です。ここでのhomeは「場所の副詞」だからです。この場合、副詞的でありなおかつ場所の意味を持つwhereを使ってあげて、

She went where?
→Did she go where?
→Where did she go?

という文を作る必要があります。第一~二回の内容を踏まえれば簡単でしょう?

さて、ここで、「名詞」と「副詞」の対立というのが出てきました。これを理解しなくては実は英文法は先に進めない。かなり重要な区別に関係するので、ここで一度おさらいしておこうと思います。次の例文を見てください。

(○)She went to the park. (彼女は公園に行った)
(×)She went the park.

上はよくて下はダメです。日本語でも「公園行った」は不自然ですよね。それと同じで、英語でも日本語の「に」にあたるtoが必要です。しかし、勘の鋭い人は、

She visited the library. (彼女は図書館に行った)

の場合にtoがいらないという理由から、この説明にケチをつけるかもしれません。そこで、別の説明の仕方が必要になってきます。もちろん、go toのtoを日本語の「に」になぞらえるのも一つの見方なのですが、もう一つの考え方-そしてこれは英文法を理解していく上でとても重要な考え方になるのですが-はgoという動詞の性質に関係するものです。英語のgoは自動詞と呼ばれます。これは名詞には直接つながることができない動詞として定義されます(ここではgo a long wayのような例外的に見えるものはひとまず置いておきましょう笑)。もし、名詞につなげたければ、to, in, of, at, about, withのような前置詞と呼ばれるものを名詞の前に置いてやる必要があります。

(×)I went the park.
(○)I went to the park.

(×)He talked the matter.
(○)He talked about the matter.(彼はその問題について話した)

(×)We arrived the station.
(○)We arrived at the station. (私たちは駅についた)

これらの例文はいずれも上がダメで下がOKです。理由は簡単でどの文でも動詞が自動詞だからです。「自動詞は名詞に直接連結できないので、つなげたければ前置詞が必要」という上の説明の通りです。一方、この自動詞というものの対になる存在として他動詞と呼ばれるものが英語にはあります。他動詞は自動詞とは逆に必ず何らかの名詞に連結しなければなりません。つまり、他動詞は名詞なしでは完結しないということです。この、他動詞にとってとても大切な名詞を目的語と呼びます。少し話がややこしくなってきて、恐らく皆さんの頭はパンクしそうになっていると思います。具体的に、例文で確認しましょう。

(○)I visited the park.(私は公園に行った)
(×)I visited to the park.

(○)He discussed the matter.(彼はその問題について論じた)
(×)He discussed about the matter.

(○)We reached the station.(私たちは駅についた)
(×)We reached at the station.

これらの例文は、先ほどのものと意味はよく似ていますが、今度は前置詞がないのが○で、前置詞があるのは×です。理由は、動詞が全て他動詞であり、目的語と呼ばれる名詞に直接つながる必要があるからです。英文法理解の上で、この自他動詞の区別は一つの要になっていると言っていいほどに重要です。早めに理解しておくことを強く勧めます。

しかし、この自他動詞の区別が「名詞」と「副詞」の区別にどう関係するのでしょうか。そこで、次の例文を見てください。

She went home. (彼女は家に帰った)
She arrived there. (彼女はそこについた)

これらの英文は間違いではありません。しかし、先ほどの自動詞が使われている上にhomeとthereの前には前置詞がありません。ということは、このhomeとthereは名詞ではないと考えなければなりません。実際は、homeもthereも副詞であり、そのうちに前置詞の意味を含んでいます。そのため、自動詞に直接つながることができるのです。名詞を用いて言い換えるなら、home=to one’s house, there= at the placeと考えていいかもしれません。

ここまでの内容をまとめてみましょう。自他動詞については:

自動詞=直接名詞につながることができず、名詞と意味的に結びつく場合には前置詞を必要とする。自動詞の後に直接出てくる要素は副詞である。

他動詞=必ず名詞に直接つながる必要がある。逆に前置詞+名詞や副詞は直接つながっていくことができない。

さらにこれらの動詞の特性から:

前置詞+名詞=副詞的な働きをするもの
副詞=前置詞+名詞もしくは一語でそれと同様の性質を有するもの

という考え方をすることができます。この定義づけは実はかなりの単純化があって、学習上からいってもいろいろ欠点がありますが、とりあえず暫定的な定義としては理解しておいて下さい。

さて、上の定義を仮定して、疑問詞、when, whereの話と関連づけてみましょう。

He went to Hokkaido during summer vacation. (彼は夏休みに北海道に行きました)

この例文で、during summer vacationは前置詞+名詞の形です。[前置詞+名詞]は[副詞]と同じ特性を持つので、副詞的かつ時の意味を持つwhenでこの部分を置きかえることができます。

He went to Hokkaido when?
→Did he go to Hokkaido when?
→When did he go to Hokkaido? (いつ彼は北海道に行ったのですか)

また、上の例文では、during summer vacationの他にto Hokkaidoも前置詞+名詞ですから、これも副詞的な特性を持ちます。ですので、副詞的かつ場所の意味をもつwhereで置き換えることができます。

He went where during summer vacation?
→Did he go where during summer vacation?
→Where did he go during summer vacation? (夏休みに彼はどこに行ったのですか)

なかなか表現の幅が広がってきましたね!


(無断転載厳禁)

英文法をやり直す(第一~二回)

日々、英語を教えていて思うのは、中学校で習う文法をしっかりと理解できていない人が意外なほどに多いということです。何事も最初が肝心です。土台がしっかりしていないと、その後いろいろ詰め込んでも、うまくいきません。英語の成績が上がらないのを理由に「自分には才能がないのかも」という不安を抱えてしまう人がいますが、むしろ、基礎が固まっていないことのほうに原因があると思います(私も中学校1,2年生の時は基礎をまじめにやっていなかったので成績が学年で最下位近くだったこともあります!)。

もちろん、中学文法が十分に理解できていないということは、ディスアドバンテージに違いありません。だからと言って、「そんな基礎的なことも理解できていないなんて」と嘆いたり、あるいはその現実から目を背けたりしても始まりません。事態の改善は、現状分析による問題発見とその漸進的な解決によってしかなし得ないわけですから。そこで、これから少しずつ、基本文法のおさらいをアップしていこうと考えました。英語にはNo man is so old but he may learn. という言い回しがあります。「何事を学ぶにも、遅すぎるということはない」のです。

===

[英文法をやり直す(第一回)]

第一回は疑問文の作り方を扱います。英語の平叙文は、be動詞が用いられている文、一般動詞(be動詞以外)が用いられている文、助動詞(will,can等)+be動詞/一般動詞が用いられている文、の3種類に分類できます(いきなり文法用語が多くて戸惑ってしまうという人は先に下の具体例の部分に進んで下さい)。どのタイプの文であるかによって、疑問文の作り方が違ってくるので、個別に見て行きましょう。

(1) be動詞が用いられている文

He is kind. (彼は親切です)

このタイプの文は主語とbe動詞の位置をひっくり返すことによって、疑問文にすることができます。

Is he kind? (彼は親切ですか)

これは過去形の文の場合も同じです。

He was kind. (彼は親切でした)
Was he kind? (彼は親切でしたか)

簡単ですね。でも、侮らないで下さい。一つのルールとして見れば極めて単純ですが、他のものと混同しないことが大切です。

(2) 一般動詞が用いられている文

She plays soccer. (彼女はサッカーをします)

このタイプは主語の前にdoを置くことで、疑問文にすることができます。但し、その際、もとの文で動詞が受けていた変化(例えば上の文のplaysのs)は全て、doが引き受けます。そのため、

(×) Do she plays soccer?
(○) Does she play soccer?

となります。もちろん、もともと動詞が何の変化も受けていない場合は、単純に主語の前にdoを置くだけで大丈夫です。

I need an automatic pencil. (シャーペンが必要です)
Do I need an automatic pencil? (シャーペンがいりますか)

では、過去のことに関する疑問文はどうなるでしょうか。過去の文は動詞が過去形になっています。この変化をdoが引き受けることになるので、

She played soccer. (彼女はサッカーをしていました)
Did she play soccer? (彼女はサッカーをしていましたか)

というように主語の前にdidを置き、もとの動詞を原形に直せばよいということになりますね。


(3) 助動詞+be動詞/一般動詞が用いられている文
まずは助動詞というものについて一言。英文法嫌いの人は、この「助動詞」のような難解な文法用語に戸惑うと言います。しかし、きちんと理解しようとすれば少しも難しくありません。助動詞とは読んで字のごとく、動詞の意味を補助するもので、be動詞や一般動詞の前について様々な意味を付け加える働きをします。例文で確認してみましょう。

He can play the guitar. (彼はギターが弾けます)
You will be there. (あなたはそこにいくでしょう)

この2つの文でそれぞれ、canは「~できる」という意味を、willは「~するだろう」という意味をもともとの動詞に付け加えています。それだけです。簡単でしょう?なお、このように助動詞が使われた文では、主語に関係なく動詞は原形となるのが決まりです。

(×) He can plays the guitar.
(×) You will are there.

このタイプの文は、be動詞が用いられているか一般動詞が用いられているかにかかわらず、助動詞と主語の位置を入れ替えることで疑問文にすることができます。

Can he play the guitar? (彼はギターを弾けますか)
Will you be there? (あなたはそこにいきますか)

be動詞、一般動詞の区別をしなくていい分、楽ですね! ここまでの内容をまずはしっかり飲み込んでください。そうすると次が楽です。



[英文法をやり直す(第二回)]

前回、3つのタイプの文と、それぞれの疑問文の作り方をおさらいしました。けれども、前回扱ったのは、いわゆるYes-No question(「はい」「いいえ」で答えることが可能な疑問文)だけでした。

Do you play soccer? – Yes.(サッカーをしますか。-はい。)
Can you play the guitar? – No. (ギターが弾けますか。-いいえ。)

疑問文にはこの他にも疑問詞(what, who等)を用いたものがあります。この種の疑問文は「はい」や「いいえ」で答えることはできず、尋ねられている情報を相手に教えてあげることで始めて会話が成立します。

What’s your name?

‐(×)Yes.
‐(○)Taro. /I’m Taro.

疑問詞疑問文もYes-No 疑問文と作り方の基本ルールは一緒です。但し、文の中の尋ねたい要素を疑問詞に変えるという点が付け加わります。例えば

This is a pen. (これはペンです)

というbe動詞の文で、a penの部分を尋ねるような疑問文(つまり「これは何ですか」と尋ねる疑問文)を作りたいとします。この場合、a penの箇所に「何?」を意味するwhatを置き、Yes-No 疑問文と同じく主語とbe動詞の位置を入れ換えます。

Is this what?

但し、これではまだ完全ではありません。疑問詞は厄介なことにもともとの位置がどこであれ、必ず文頭に出さねばならないというルールがあります。この決まりに従うと、whatはIsの前に出ることになりますね。

What is this? (これは何ですか)

はい、これで出来上がりです。一般動詞の文、助動詞の文も同じように、前回の内容を応用できます。

He knows that. (彼はそのことを知っています)

という一般動詞の文で、thatを尋ねる疑問文(つまり「彼が何を知っているのか」を尋ねる疑問文)を作りたければ、thatをwhatに換え、heの前にdoを置きます。但し、この文では主語がheであることによって、knowがknowsになっていますから、このsをdoが引き受けて、doesとなります。

Does he know what?

後は、最後の仕上げとして、whatをDoesの前に持ってくれば

What does he know? (彼は何を知っているのですか)

となり、出来上がりです。

助動詞の文も同じです。

She can do that. (彼女はそれをすることができます)

のthatを尋ねる疑問文を作りたいとします。もう分かりますね。thatの位置にwhatを置いて、sheとcanの位置を入れ換えます。そして、whatを一番前に持ってくれば出来上がり。

→Can she do what
→What can she do? (彼女に何ができるのですか)

さて、これで終わり!と行きたいところですが、実はそういかないのが疑問詞疑問文の面倒な部分です。これまで、疑問詞疑問文では、疑問詞になっている部分を文頭に出すという説明をしてきました。

Is this what
→What is this?

Can she do what
→What can she do?

しかし、最初から疑問詞の部分が文頭にある場合はどうなるのだろう、と考えた人もいるかもしれません。例えば

This fact is important. (この事実は重要です)

のThis factの部分を尋ねる疑問文(つまり「何が重要なのですか」と尋ねる疑問文)の場合、どうなるのか、ということです。このタイプの文では、尋ねたい部分を疑問詞に変えた段階で、疑問詞が文頭にあるので、それ以上移動させる必要はありません。また、動詞、助動詞についても全く操作が不要です。つまり、主語の部分を疑問詞に変えるだけで即、疑問文の出来上がりです。

What is important? (何が重要ですか)

結局、一番簡単に作れる疑問詞疑問文ということになりますが、主語以外の部分を尋ねるパターンと作り方が異なるという点では注意が必要です。ではここまで(第一~二回)の内容をまとめましょう。


[Yes-No 疑問文]

(1) 動詞がbe動詞の場合:
be動詞と主語の位置を入れ換える
He is shy. → Is he shy?

(2) 動詞が一般動詞の場合:
文頭にdoを付け加える。但し、もともとの動詞が受けていた変化(三単現のs/過去形など)は全てdoが引き受ける。
He plays the guitar. →Does he play the guitar?
She smoked at that time. →Did she smoke at that time?

(3) 助動詞が用いられている場合:
助動詞に続くのがbe動詞であるか一般動詞であるかにかかわらず、助動詞と主語の位置を入れ換える。
You will be there. →Will you be there?
They can smoke here. →Can they smoke here?


[疑問詞疑問文]

(1) 主語以外の要素を尋ねる(主語以外の部分が疑問詞となる)場合:
尋ねる部分を疑問詞に変える。Yes-No 疑問文と同じ操作を動詞部分に行った上で、疑問詞を文頭に移動する。
This is a novel. →This is what. →Is this what. →What is this?
He said that. →He said what. →Did he say what. →What did he say?

(2) 主語を尋ねる(主語部分が疑問詞となる)場合:
主語を適切な疑問詞に変える。
He is a policeman. →Who is a policeman?
This made her angry. →What made her angry?


===

以上、さも簡単なことのようにこの種のルールを話してきましたが、英文法をあまり理解していない状態から、ここまでのことをしっかりマスターするにはそれなりの負荷がかかることは否定しません。とはいえ、それはほんの数時間~数日間、集中して勉強すれば簡単に乗り越えられる負荷です。その少しの労力をケチったがゆえに、それ以降の英文法の授業が理解できなくなり、英語が不得意になったり嫌いになったりする。それはもったいないことだと思います。

(無断転載厳禁。但し、個人的に印刷するのは可)