2010年12月4日土曜日

英文法をやり直す(第三回)

[英文法をやり直す(第三回)]

第一~二回で疑問文に関する基礎をおさらいしました。ただし、疑問詞疑問文について、扱った疑問詞はwhatとwhoだけでしたね。疑問詞は他に、which, why, when, where, howなどがあります。第三回ではwhich, when, whereの使い方について少し見ていきましょう。

(1) which

whatが「何?」であるのに対し、whichは「どれ?」「どの?」というイメージです。例えば、

He likes this book. (彼はこの本が好きです)

のthisの部分を尋ねたい時(「彼が好きなのは「どの」本なのか」というような疑問文を作りたい時)などにwhichを使います。疑問文の作り方自体は全く同じで、尋ねたい部分を疑問詞に変え、動詞部分に疑問文の操作を行います。この文の場合、likesは一般動詞であり、三単現のsがついていますから、heの前にdoesを出し、likesからsを取ればいいわけですね。

Does he like which book?

ここから、whatの時と同じように、疑問詞を文頭に出すわけですが、今回の文ではthis bookという名詞句の一部であるthisをwhichに変化させているわけですから、そこからwhichだけを強引に引きはがして前に移動させることはできません。というわけで、which book全体を一塊の要素として文頭に移動させることになります。

(×)Which does he like book?
(○)Which book does he like? (彼はどの本が好きですか?)

日本語で「彼はどの本が好きですか」の「どの」だけ位置を変えることが難しいのと同じです。

(×)「どの彼は本が好きですか」
(×)「彼は本がどの好きですか」

さて、今、目の前の机に10冊程度の本が並んでいると考えてみましょう。その10冊のうち「彼はこの本が好きです」と言いたければ、

He likes this.

ということができます。つまり、この場合this bookのことを意味しているのは分かり切っているので、this bookといちいち言わなくても、thisだけでいいのです。日本語で言うと、this bookのthisは「この」という意味であり、thisだけで使う場合には「これ」という意味になるということです。文法的に言うと、this bookのthisは指示形容詞であり、thisだけの場合は指示代名詞ですね。もちろん、whichはこの指示代名詞としてのthisのかわりとなることもできます。ですので、

He likes which?
→Does he like which?
→Which does he like? (彼はどれが好きなのですか)

という文ももちろん可能です。

(2) when, where

では、次はwhenとwhereについて少し考えてみましょう。この二つの疑問詞がwhatと大きく異なるのは、whatが名詞的であるのに対し、これらが副詞的であるという点です。(もちろん、この区別にはかなり曖昧な側面があることは否めません。) ひとまず、この区分を暫定的に仮定して話を進めましょう。例えば、He likes the book.のthe bookを尋ねる文はwhatを使って作ることができますが、

He bought the book yesterday. (私はその本を昨日買いました)

のyesterdayを尋ねる場合はどうでしょうか。同じ理屈でwhatを使って

(×)What did he buy the book?

という文を作っても、これは間違いです。これが正しくない理由は、yesterdayが「時の副詞」であるからで、名詞であり、しかも時の意味を持たないwhatではかわりになることができないからです。けれども、「時=when」という安易な覚え方はお勧めできません。ちゃんと、「副詞」という要素も一緒に覚えることが大切です(後で必ず効いてきますから)。そこで、上の例文のyesterdayを聞く疑問文を作りたければ、副詞的であり時の意味を持つwhenを使わなければいけません。しかし、その点以外はwhat, whichの時と同じです。

He bought the book when?
→Did he buy the book when?
→When did he buy the book?(彼はいつその本を買ったのですか)

「場所の副詞」に関しても同じように考えてもらって大丈夫です。

She went home. (彼女は家に帰った)

のhomeの部分を尋ねたければ、whatでは無理です。ここでのhomeは「場所の副詞」だからです。この場合、副詞的でありなおかつ場所の意味を持つwhereを使ってあげて、

She went where?
→Did she go where?
→Where did she go?

という文を作る必要があります。第一~二回の内容を踏まえれば簡単でしょう?

さて、ここで、「名詞」と「副詞」の対立というのが出てきました。これを理解しなくては実は英文法は先に進めない。かなり重要な区別に関係するので、ここで一度おさらいしておこうと思います。次の例文を見てください。

(○)She went to the park. (彼女は公園に行った)
(×)She went the park.

上はよくて下はダメです。日本語でも「公園行った」は不自然ですよね。それと同じで、英語でも日本語の「に」にあたるtoが必要です。しかし、勘の鋭い人は、

She visited the library. (彼女は図書館に行った)

の場合にtoがいらないという理由から、この説明にケチをつけるかもしれません。そこで、別の説明の仕方が必要になってきます。もちろん、go toのtoを日本語の「に」になぞらえるのも一つの見方なのですが、もう一つの考え方-そしてこれは英文法を理解していく上でとても重要な考え方になるのですが-はgoという動詞の性質に関係するものです。英語のgoは自動詞と呼ばれます。これは名詞には直接つながることができない動詞として定義されます(ここではgo a long wayのような例外的に見えるものはひとまず置いておきましょう笑)。もし、名詞につなげたければ、to, in, of, at, about, withのような前置詞と呼ばれるものを名詞の前に置いてやる必要があります。

(×)I went the park.
(○)I went to the park.

(×)He talked the matter.
(○)He talked about the matter.(彼はその問題について話した)

(×)We arrived the station.
(○)We arrived at the station. (私たちは駅についた)

これらの例文はいずれも上がダメで下がOKです。理由は簡単でどの文でも動詞が自動詞だからです。「自動詞は名詞に直接連結できないので、つなげたければ前置詞が必要」という上の説明の通りです。一方、この自動詞というものの対になる存在として他動詞と呼ばれるものが英語にはあります。他動詞は自動詞とは逆に必ず何らかの名詞に連結しなければなりません。つまり、他動詞は名詞なしでは完結しないということです。この、他動詞にとってとても大切な名詞を目的語と呼びます。少し話がややこしくなってきて、恐らく皆さんの頭はパンクしそうになっていると思います。具体的に、例文で確認しましょう。

(○)I visited the park.(私は公園に行った)
(×)I visited to the park.

(○)He discussed the matter.(彼はその問題について論じた)
(×)He discussed about the matter.

(○)We reached the station.(私たちは駅についた)
(×)We reached at the station.

これらの例文は、先ほどのものと意味はよく似ていますが、今度は前置詞がないのが○で、前置詞があるのは×です。理由は、動詞が全て他動詞であり、目的語と呼ばれる名詞に直接つながる必要があるからです。英文法理解の上で、この自他動詞の区別は一つの要になっていると言っていいほどに重要です。早めに理解しておくことを強く勧めます。

しかし、この自他動詞の区別が「名詞」と「副詞」の区別にどう関係するのでしょうか。そこで、次の例文を見てください。

She went home. (彼女は家に帰った)
She arrived there. (彼女はそこについた)

これらの英文は間違いではありません。しかし、先ほどの自動詞が使われている上にhomeとthereの前には前置詞がありません。ということは、このhomeとthereは名詞ではないと考えなければなりません。実際は、homeもthereも副詞であり、そのうちに前置詞の意味を含んでいます。そのため、自動詞に直接つながることができるのです。名詞を用いて言い換えるなら、home=to one’s house, there= at the placeと考えていいかもしれません。

ここまでの内容をまとめてみましょう。自他動詞については:

自動詞=直接名詞につながることができず、名詞と意味的に結びつく場合には前置詞を必要とする。自動詞の後に直接出てくる要素は副詞である。

他動詞=必ず名詞に直接つながる必要がある。逆に前置詞+名詞や副詞は直接つながっていくことができない。

さらにこれらの動詞の特性から:

前置詞+名詞=副詞的な働きをするもの
副詞=前置詞+名詞もしくは一語でそれと同様の性質を有するもの

という考え方をすることができます。この定義づけは実はかなりの単純化があって、学習上からいってもいろいろ欠点がありますが、とりあえず暫定的な定義としては理解しておいて下さい。

さて、上の定義を仮定して、疑問詞、when, whereの話と関連づけてみましょう。

He went to Hokkaido during summer vacation. (彼は夏休みに北海道に行きました)

この例文で、during summer vacationは前置詞+名詞の形です。[前置詞+名詞]は[副詞]と同じ特性を持つので、副詞的かつ時の意味を持つwhenでこの部分を置きかえることができます。

He went to Hokkaido when?
→Did he go to Hokkaido when?
→When did he go to Hokkaido? (いつ彼は北海道に行ったのですか)

また、上の例文では、during summer vacationの他にto Hokkaidoも前置詞+名詞ですから、これも副詞的な特性を持ちます。ですので、副詞的かつ場所の意味をもつwhereで置き換えることができます。

He went where during summer vacation?
→Did he go where during summer vacation?
→Where did he go during summer vacation? (夏休みに彼はどこに行ったのですか)

なかなか表現の幅が広がってきましたね!


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